近年、海外旅行の増加に伴い、観光客のレンタカー利用が急増しています。
特に、日本と韓国はお互いに人気の旅行先であり、韓国人観光客による日本でのレンタカー需要も年々高まっています。
しかし、日本と韓国ではレンタカー文化やビジネスモデルに大きな違いがあるため、韓国人向けにレンタカー事業を展開する際には、それぞれの市場特性や韓国人利用者のニーズを正しく理解することが重要です。
今回の記事では、日本と韓国のレンタカー文化の違いをわかりやすく解説し、韓国人向けサービスを展開したい企業に役立つポイントや注意点をまとめてご紹介します。
日本では、レンタカーは「クラス販売」が基本で、事前予約が一般的です。また、異なる営業所で返却できる「乗り捨てシステム」も普及しています。
「クラス販売」とは?
「クラス販売」とは、車種を特定せずに「コンパクトカー」「ミニバン」「SUV」など、車両のサイズやタイプによって分類されたクラス(車両のタイプ別分類)単位で予約・貸出を行う方式です。
利用者はそのクラス内のいずれかの車両を利用することになります。
一方、韓国では、「車種販売」が中心で、当日予約や短時間レンタルのニーズが高く、柔軟な利用が特徴です。
予約はOTAサイトよりもレンタカー会社の自社ホームページを通じて行われることが多く、日本のような乗り捨てシステムはほとんどありません。
「車種販売」とは?
「車種販売」とは、特定のメーカー・モデル(例:トヨタのプリウス、ホンダのN-BOXなど)を指定して予約・貸出を行う方式です。利用者は予約したその車種が確実に提供されるのが基本となります。
韓国では、ガソリン、ディーゼル車、電気自動車が主流です。燃費に対する意識がとても高い傾向にあります。そのため、日本では特にハイブリッド車が人気です。
車の見た目も、韓国の若い世代や女性旅行者にとっては大切なポイントです。
パステルカラーや個性的で可愛いデザインの車が好まれる傾向にあります。日本ならではの軽自動車やコンパクトカーのユニークな見た目に惹かれる方も多く、写真映えするという理由で選ばれることもあります。
韓国からの観光客の中には、日本でゴルフを楽しみに来る人も多くいます。
しかし、慣れていない日本の車種を予約する際、多くの韓国の方はトランクにスーツケースが何個積めるのか、ゴルフバッグが入るのかが分からないため、そうした情報を提供することで、自分に合った車種を選ぶことになります。車選びの際に「どれくらいトランクに荷物が入るか」はとても重要なポイントになります。
そんな利用者のために、以下のような工夫がおすすめです。
「この車ならゴルフバッグだけではなく、スーツケースが〇本入る」といった具体的な情報があれば、利用者も安心して予約できます。
日本のレンタカー販売では、補償オプションが豊富に用意されており、プランによっては事故時に自己負担額が発生することが一般的です。
韓国では、補償内容によっては回数制限なく事故をカバーできるプランもあり、より手厚い補償が提供されるケースもあります。
保険や補償内容、事故発生時の対応方法、そして利用者の自己負担額については、シンプルで直感的にわかりやすくご案内することが非常に大切です。
以下のように情報を一目で理解できるよう整理しておくことで、予約時に利用者からの信頼を得やすくなり、不要な誤解も防ぐことができます。
日本では、満タンでの返却が義務付けられており、返却時にはスタッフが燃料メーターを確認します。
もしガソリンが満タンでなかった場合は、レンタカー会社が最寄りのガソリンスタンドの価格を基にガソリン代を再計算し、その金額が請求される仕組みです。
たとえば、返却時にガソリンメーターが8割だった場合、残りの2割分のガソリン代に加えて手数料(数百円〜1,000円程度)が加算されることがあります。
韓国でも満タン返しが一般的ですが、レンタカー会社によっては、貸出時のガソリン量と同じ量にして返却するというルールを採用している場合もあります。
たとえば、貸出時にガソリンが50%入っていた場合は、返却時にもおおよそ50%程度にして返せば問題ないとされています。
※ただし、韓国国内のレンタカー会社でも一部は満タン返却を義務付けている場合があるため、予約時に確認が必要です。
満タンで返却しなかった際には、実際の走行距離に基づいてガソリンの消費量を計算し、その分の料金が請求されるケースが多く見られます。
なお、貸出時と同じ量のガソリンを給油しなかった場合には、ガソリン代に加えて手数料(約1,000円前後)が加算されることがあります。
日本では、クレジットカード・電子マネー・現金など、多様な支払い方法が利用可能です。
一方、韓国では、クレジットカード決済が主流で、現金払いはほとんど行われていません。
また、キャンセルポリシーも異なり、日本では前日キャンセルに一定の手数料が発生することが一般的ですが、以下レンタカー店舗のように韓国では24時間前までなら無料でキャンセルできるケースもあります。
日本では左側通行、韓国では右側通行が基本です。
この違いにより、韓国から来たドライバーにとって、日本での運転は最初は戸惑うことが多くなります。
具体的には、
このような違いから、韓国人観光客や一時滞在者が日本でレンタカーを利用する場合、事前に交通ルールや運転環境についてしっかり案内することが非常に重要です。
運転マナーについては、一時停止やウインカーの使い方に違いがあり、日本では細かいルールが厳格に守られる傾向があります。
一方で、韓国の運転習慣では、よりスピーディーな運転が好まれる傾向があります。
また、クラクションやハザードランプを使って意思表示する場面も多く、コミュニケーション的な運転が一般的です。
そのため、韓国から来たドライバーが日本で運転する際は、「日本では細かなルールが非常に重要である」ということをしっかりと認識してもらうことが、安全運転につながります。
韓国では都市部を中心に駐車スペースが不足しており、縦列駐車(二重駐車)が日常的に行われています。
特にアパート周辺や繁華街では、道路脇にぎっしりと車が並び、他の車の出入りを妨げることも少なくありません。
このような状況では、車の中に電話番号のメモを残す習慣が一般的で、後から駐車した車の持ち主に連絡して移動してもらうケースが多く見受けられます。
日本で起こった実例
実際にあったケースとして、日本の「契約駐車場」にうっかり駐車してしまうことがよくあります。トラブルを防ぐためにも、駐車しないようお願いする形で、画像と一緒に案内すると安心です。
日本では、車に装着されているカーナビを利用するのが一般的で、電話番号検索機能が広く使われています。
一方、韓国では、スマートフォンのナビアプリ(Googleマップや専用ナビアプリ)を利用することが主流で、Android AutoやApple CarPlayの活用も進んでいます。また、日本と異なり、韓国では電話番号検索ではなく、住所や名称検索が一般的です。
高速道路や有料道路の支払い方法は両国とも同じく、日本ではETCが一般的で、韓国ではハイパスカードが主流です。
そのため、多くの韓国人は日本でETCの利用を希望しています。
店舗側では、事前にETCカードを準備し、車両にETC車載器を設置しておくことが推奨されます。
日本と韓国では、レンタカーの利用方法や交通文化、補償制度などに多くの違いがあります。
韓国人向けにサービスを提供する際には、そうした違いをしっかり理解し、現地の利用者目線に立った対応が求められます。
車の予約からナビの使い方、返却ルール、保険・補償の説明、さらには駐車や交通マナーに至るまで、丁寧な案内とわかりやすい情報提供が信頼につながります。
特に韓国語対応やビジュアル(画像や動画など)を活用したガイドブックは、トラブル防止や満足度向上に大きく貢献します。
文化の違いを越えて、安全で快適なレンタカー体験を提供することが、今後のビジネス成功のカギとなるでしょう。